2013/05/28

着物モデル詐欺と特定商取引法違反


着物モデル募集と広告し,着物を買えばモデルになれると偽ったとして詐欺と特定商取引法違反で逮捕者がでたそうです。

実際にモデルを派遣した形跡がないならば,詐欺という構成はわかりやすいと思います。

では,特定商取引法違反とはなんでしょうか。

特定商取引法とは,消費者保護と取引の公正を目的にした法律です。

いくつかの取引類型にルールを設定しています。

今回は,「業務提供誘引販売取引」 (簡単に言うと,商品を購入するなどの負担をすれば,仕事を紹介して一定の利益を得させますよ,という誘い方をする取引です)の規制に関係しています。

こうした取引では,勧誘する時に,紹介してもらえる仕事の内容やギャラ,引き替えに買わされる商品などについて,業者は嘘を言ってはいけないと定められています(不実の告知の禁止 特商法52条1項各号)。

上記に違反した業者には,業務停止などの行政処分等(56条,57条)や,3年以下の懲役または300万円以下の罰金(あるいはその両方)に処せられる(70条)可能性があります。

2013/05/21

開運グッズの広告を載せた出版社に責任追及できるか



雑誌の載っていた開運グッズの広告を見てグッズを購入した人が,さらに霊感商法被害にあったことの損害賠償請求を出版社に求めて提訴したそうです。

新聞社が新聞広告を掲載する場合に、広告の内容の真実性について疑念を抱くべき特別の事情があつて読者に不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見し得たときは、右広告内容の真実性について調査確認をする注意義務があるとされています(最高裁判決平成元年9月19日)。

なお,最高裁のケースでは,情報を行政がオープンにしていなかったため,新聞社(と広告会社)はあやしい広告主であることが分からなかったとして,新聞社の責任を否定しています。

今回のケースは,実際に広告に載っていた商品自体は1万円超程度であったようで,さらに数百万円の霊感商法被害を予見できたかが争点になりそうです。

2013/05/15

お祭りの名前を商標登録できるか



ディズニーが,メキシコなどで著名な祝祭「死者の日」を商標登録出願し,大きな批判を浴びて出願を取り下げたそうです。

日本で言えば,「ひな祭り」を商標登録するようなものでしょうか。

例えば,「沖縄全島エイサーまつり」の商標を沖縄市観光協会が登録していますが,比較的新興のイベントに関して,主催者がなんらかの商標登録をすることはありうることでしょう。

一方,伝統的に行われてきた風習の名称を商標登録されると,誰もがやってきた風習に支障が生じかねません。

あまりにも著名なお祭りの名称を商標を登録することは, そのお祭りに先祖代々親しんできた人々の感情を損ない,場合によっては信仰の尊厳を損なうのではないでしょうか(だからこそ,前述の大きな批判が起こったのでしょう)。

そのような商標登録は,公の秩序に反するとして,商標登録できない可能性もあります(商標法第4条第1項第7号)。

これと似た事例として,「Buddha」,「仏陀」の商標登録が拒絶された審決があります。

2013/05/10

「ぼったくりアプリ」のどこが新しいのか



スマホにアダルトなアプリをインストールし,漫然とクリックした結果,高額の請求を受ける「ぼったくりアプリ」が横行しているそうです。

 今までよくあった「ワンクリック詐欺」との違いはなんでしょうか。

「ワンクリック詐欺」は,利用者が「まだお金がかからないだろう」と思うようなボタン(最初のアクセスをするボタン等)をクリックした途端に,契約が成立したと強弁して請求する詐欺です。

ですので,利用者の意思確認を十分に行った上でないと契約成立を認めなかったり,契約を無効とする法律やガイドラインが整備されてきました。

 今回話題の「ぼったくりアプリ」は,こうした「意思確認」面をガイドライン等に沿って行った上で,提供するコンテンツの品質や値段で「だます」手口のようです。

一見新しい手口のようにも思えますが,要するに昔からある詐欺の手口に先祖返りしたとも言えます。

内容によりますが,公序良俗違反による無効(90条)や詐欺取消(96条)など,民法の条文で対抗することが考えられます。たしかに「ワンクリック詐欺」ほど画一的な処理ではないでしょう。

心当たりの方は,すぐに専門家や消費者センターに相談してみてください。

2013/05/08

野球はどうなるの?金属バットを持って集まると罪になるか?



 金属バットを持って集まったとして,元暴走族のリーダーが逮捕されました。

金属バットを持って集まることが罪になるなら,野球はできなくなるような気がします。

刑法には,凶器を持って集まることを禁止する条文があります。

第二百八条の三  二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。

「害を加える目的」で集まることが要件になっていますので,当然ですが,野球をするために集まっても該当しません。

あまりなじみのない条文だと思います。

元々はヤクザの抗争を鎮圧するために制定された罪ですが,最近は適用例が減少していました。